処方薬が「余ったら」他人に譲ってよいか?

処方薬が「余る」ことは原則ありません。処方薬はその患者に合った薬を、医師が診察のうえ必要な量と期間を考慮した、いわばオーダーメイドであり、処方を受けたご自身が医師の指示通りに使うのが前提です。そんな四角四面に考えなくても…と、思われる方はこちらをご覧ください。

・処方薬を自己判断でやめるということ
・処方薬を「症状が同じだから」と他人に飲ませること
・処方薬を他人に「業として」譲渡すること
・処方薬の「余り」を別の機会に使うこと
・処方薬の「余り」をインターネットで売買すること

処方薬を自己判断でやめるということ

例えば抗生物質をのむと症状も軽くなり、あまり薬を多く飲みたくないとい気持ちからも途中でやめてしまう方もおられますが、生き残った病原菌が再び増加し症状がぶり返すことがありますので、医師の指示通りの量と期間で飲み切ることが大切です。

処方薬を「症状が同じだから」と他人に飲ませること

家族や友人に対し、以前自分が医師から処方されたものを「症状が同じだから」と譲り渡す方もおられます。善意からの行為なのでしょうが、その薬を飲んだ人に思わぬ作用が生じたり、本来すぐ病院に行く必要があった状況なのにもかかわらず、そのことで受診の機会を逸し症状を重篤化させてしまう(この場合、薬を渡した側に民事上の不法行為責任が生じる可能性はあります)ことも考えられますので安易な譲渡には危険が伴います。

※ED治療薬を友人へおすそ分け?!
特にED治療薬はその目的がいわゆる疾患の治療ではないこと、服用のタイミングが自由に決められること、携行も可能なことで、友人間などでの譲渡が比較的多くあるようですが、これらも処方薬にあたりますので処方を受けた本人以外は使用すべきではありません。万が一は、起こり得ます。易きに流れず、医療機関からの処方を受けましょう。

 

処方薬を他人に「業として」譲渡すること

薬機法(旧薬事法)の規定には“第二十四条  薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ「業として」医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列(配置することを含む。以下同じ。)してはならない。”とあります。家族や知人に何度か処方薬をあげただけで「業として」の「授与」に当たるというようなことはなさそうですが、薬の種類によっては麻薬及び向精神薬取締法、または医師法17条の「医師でないものは医業を行ってはならない」との規定に反すると解される可能性はあります。気軽に売買ができるものではないことの再認識が必要です。

処方薬の「余り」を別の機会に使うこと

たとえご自身に処方された薬だとしても、これは使うタイミングについても限定されたものですから、いつでも有効といえるものではありません。多くの錠剤では長期の保存が可能とはなっていますが、図らずも「余らせて」年数を経たくすりは、保存の環境によっては成分が変化して、本来のくすりの効果が期待できないことがあります。もったいないと思うかもしれませんが、使用はすべきではありません。

※処方薬を指導通りに服薬せず、次回の来院時にそれを言い出せずにまた追加の処方薬を受取ってしまうことが積み重なり、その累計が日本では年間約500億円分にものぼると言われています。処方薬の返却はできませんが、継続的に薬を飲んでいる場合、医師や薬剤師に残薬のある旨を伝えると、過剰と思われる薬の量を調整できるよう制度が改められました。(重複投薬・相互作用等防止加算)

 

処方薬の「余り」をインターネットで売買すること

薬機法(旧薬事法)は、医薬品や医療機器などの品質や有効性、安全性を保つために必要な事項が定めた法律です。医薬品の販売業の許可を受けていない者がフリマアプリ等で医薬品を販売した場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処せられる可能性があります。国内製の医薬部外品や化粧品であれば販売・転売は可能ですが、販売の際の宣伝方法などによっては薬機法違反になり得ます。厚労省は薬機法に違反しているサイトの情報を常に収集しており、誰でも通報できるようにしてあるため、第三者の通報によって容易に発覚します。

・薬機法によって販売・転売の規制を受ける:要指導医薬品、第1~3種医薬品、ほか
・薬機法によって販売・転売の規制を受けない:国内製の医薬部外品、国内製の化粧品
※詳しい分類はこちら

譲渡薬の売買における注意・処罰の事例
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健康被害情報・無承認無許可医薬品情報(厚生労働省)
個人輸入での経口避妊薬の購入は大変危険です(厚生労働省)
あやしいヤクブツ連絡ネット

!処方薬はご自身の健康のため、譲渡しようとする方の健康を損ねないため、薬剤耐性菌を生まないため、日に日に増える医療費の増大を防ぐためにも、医師の指導通りに服用しましょう!