保険診療と自由診療「処方薬」の位置づけは?

おなじ薬を医師から処方してもらうにしても、風邪のときとEDやAGAの薬をもらうときにはどんな違いがあるのでしょうか。薬は薬なのに健康保険が適用される場合とそうでない場合の違いについて疑問に思われたことはありませんか。

■保険診療と処方薬

保険診療とは、私たちが病気やケガで病院を訪ね、当たり前のように「保険」を使って医療行為を受けるそのことです。この「保険」とは「国民皆保険制度」のことを指します。日本でいつでも誰でもどこでも等しく基礎的な医療サービスが受けられるよう、通常は年齢、性別、住所、職業などにかかわらず、たいていは誰でも国民健康保険や企業や組合などの健康保険に加入しています。処方薬をもらっても、窓口で支払う料金が実際にかかった金額の2~3割で済むのは、自身が加入している健康保険が残りの7~8割を負担しているからです。ただし、全ての医療行為に保険が適応されると、その保険組合の財政が圧迫され、全ての人に必要最低限の医療サービス行う、という基礎が崩れてしまうため、適応できる治療方法や料金、処方する薬などの細かい規定が定められています。同じ治療を異なる医療機関で受けた際に、基本的に支払金額が同じなのはこのためです。この規定を外れた治療を行えないことは不便ともいえる点のひとつですが、どんなに小さな病気の治療でも破産の原因になりかねない、国民皆保険制度をとらない国に比べると優れた制度であるともいえます。

■自由診療と処方薬

自由診療は医療保険制度を用いない治療のことをいいます。医療保険からの補助を受けないため、治療費、処方薬代の負担が10割(100%自己負担)になります。保険診療のように国民健康保険法などに基づく決まりや制限がありません。認可を待っている状態の治療法の先取りや、や生活を豊かにするための治療などは、医療保険適応外であることがほとんどです。治療内容や値段を医療機関で自由に設定できるため、まさに自由な医療サービスを選ぶことができます。ED・AGA治療とその処方薬、は生活の質を高めるたことに使われるという意義でこれにあたります。
自由診療にあたるものの例
・ガンなどの治療にあたって、国内未承認だが有用性が見込まれる治療法など
・一部の精密検査や人間ドック
・美容整形
・予防接種
・レーシック
・インプラント
・健康上の理由以外の漢方薬
・不妊治療(2022年4月より制限つきで保険適用)
ED・AGA治療

■先進医療

先進医療は厚労大臣が認めた「高度な医療技術を用いた治療方法」のことです。
一般的に先進医療は「自由診療」に含まれますが、一定の施設基準を満たした特定の医療機関で受ける条件があれば、通常の保険診療と先進医療の併用が認められています。
つまり、先進医療部分は全て自己負担で支払うことになりますが、公的医療保険が適用される保険診療部分は通常通り2~3割負担で治療が受けられるということです。この自己負担分については「高額療養費制度」の適用も受けることができます。

■混合診療

混合診療は、保険診療と自由診療を組み合わせた治療のことをいいますが、日本ではこれを原則禁止しています。なぜなら所得により受ける医療に格差がうまれ、全国民に平等な医療を受ける機会を保証した皆保険制度に反するからです。また患者の負担が不当に拡大したり、科学的根拠のない医療の実施を助長したりする可能性があることなども懸念されるからです。診療行為のなかで、一部分でも保険診療の対象外のものが含まれるものがあれば、すべてが自由診療とされます。ただし、近年では医療サービスの選択肢を広げることを目的とし、評価療養、選定療養というかたちで例外的に混合診療が認められることがあります。
・評価療養:先進医療、治験に関わる薬・医療、薬事法承認後で保険収載前の薬・機器の使用、適応外の薬・機器の使用
・選定療養:差額ベッド、時間外診療、歯科金合金、長期入院など