薬を処方できる期間や量に上限はあるか?

薬は「市販薬」と「処方薬」の2種類に大きく分けられます。市販薬とはその名の通り、ドラッグストアやインターネットなどで広く販売している薬のことです。一方、処方薬は医師からの指導が必要な薬のことで、基本的には医療保険が適応されます。
処方薬に「医師からの指導が必要」というのは、市販薬に比べ副作用などの点で危険性が高いということです。これにより以前は処方薬には一定の上限が定められていましたが、高血圧や糖尿病などの慢性疾患の患者の負担を減らすため、2002年の診療報酬改定により、症状が安定している患者には90日以上など長期に渡る処方が可能となりました。
ED・AGA治療薬は処方薬にあたりますが、医療保険の対象ではなく自由診療扱いになります。医師が適当であると判断(有効期限内であり、長期の服用にも問題ない場合)すれば、基本的には好きなだけの量を処方してもらえると考えてよいでしょう。

・処方量に上限があるのはどんな薬か?
・なぜ長期処方がこれまで認められてこなかったのか?そのリスク
・新型コロナウイルスの影響で処方量は変わったか
・ED・AGA治療薬の長期処方について

処方量に上限があるのはどんな薬か?

処方量の上限が撤廃されたとはいえ、どんな薬でも医師の裁量で長期処方できるようになったわけではありません。向精神薬や睡眠薬など依存性があり、大量使用により命に危険が及ぶ可能性のある薬や不当な売買が起こりやすい薬のほか、発売から1年未満の新薬にも制限が設けられています。

なぜ長期処方がこれまで認められてこなかったのか?そのリスク

一度に処方できる薬の量に基本的に制限はなくなりましたが、患者の希望を鵜吞みにして薬が処方されるわけでも勿論ありません。次にあげる薬の長期処方に伴うリスクがその理由です。

・定期的な検査や診察ができない
数年にわたって慢性疾患の症状が安定している患者は、「いつもと同じ薬しか処方されないのに毎回毎回通院する必要があるのか?」と面倒に感じる方も多いと思います。しかしその安定が突如として崩れることは誰にでも起こり得ます。そのような変化になるべく早く対応する機会を逸するのを防ぐために、医師の指導に触れない期間をあまりに長くすることを良しとしないのです。

 ・効き目の確認ができない
長期処方は薬の効き目を確認できないのもデメリットのひとつです。とくに、高い効果が危険な副作用にもつながりかねない薬や、効果が変動的な薬などを漫然と使用し続けるのは適切でないため、たとえ処方量に上限がないと言っても、長期にわたって処方することは通常ありません。

・正しい服薬方法を維持しにくい
医師や薬剤師の指示に基づいた正しい方法で、毎日、長期にわたって服薬を続けることはいざ実践しようとすると難しいものです。とくに認知機能が低下しつつある高齢者などは、飲み忘れや回数の誤りなどがおこりやすいため自身の自己管理能力が必要になります。医師は患者の認知機能などの面からも長期処方の可否を決めているのです。

新型コロナウイルスの影響で処方量は変わったか

薬の長期処方にはそれなりのリスクがあるため、平常時であれば症状に変化がなくても定期的な検査や診察を受けることが推奨されてきましたが、新型コロナウイルスの影響を受け、厚生労働省などが「不要不急の受診(これは患者側にも一部問題があります)」を呼びかけた結果、調剤薬局で取り扱われた処方箋は前年よりも大きく減っています。また、現在はオンライン診療も普及がすすみ、さらに長期処方を受ける患者の増加が予想されています。

ED・AGA治療薬の長期処方について

ED治療薬の有効期限は種類により2~4年ほどありますが、効果を期待する時間は数時間ですので、長期の処方という場合はどれだけストックができるかということになります。医師の診察で処方に問題がなければ、原則的には有効期限内で使える量までが上限(何百錠になるのでそのような方はいませんが)となります。ご自身の生活スタイルや通院のしやすさを考えて必要な量を考えてください。ただし、あくまで診察時の健康状態に基づいて処方が行われますので、途中で状況が変わった場合にはすぐに医師と相談して下さい。

AGA治療薬の有効期限はどれも約2年ほどありますが、毎日一定期間飲む必要があるので、約1ヶ月を最小の処方単位としている医療機関が殆どです。これは効果を期待するあいだ年単位で服用するのが一般的ですが、その使用中に効果が感じられない、性欲の減退がある、肝臓の検査数値に変化があったなど、がおこった場合には次の通院機会の前にでも医師との相談が必要となります。